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Idea Reality:ラピッドプロトタイピングと失敗の前倒し

製品開発

製品開発、特にプロトタイピングは容易な作業ではありません。その性質上、プロトタイピングでは、反復作業、ミス、さらには不良品が必ず発生するため、失敗のたびに、調整、改良、仕上げを行うことになります。

従来、このプロセスには高いコストがかかっていました。時間もかかり、銀行口座からはお金が消えていきます。製品開発に失敗はつきものだとわかっていても、コストは膨らむ一方です。イギリスのハンプシャー州に拠点を置く製品設計開発スタジオのIdea Reality社がこの問題を解決するために目を付けたのが、3Dプリンティングでした。

試作の繰り返し

「この技術により、時間とコストの面だけでなく、お客様へのメリットの面でも、大幅な改善を実現できました」とIdea Reality社の設計ディレクターであるJames Lamb氏は語ります。「私たちは、プロトタイピングの最初のプロセスを初めて見直しました。一連の作業の中で試作を繰り返しながらプロジェクトを短期間で進めることができるようになり、お客様の意図を何度も確認する必要がなくなりました。これにより、最初から適切なものをお客様に提供することができています」。

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英国のハンプシャー州に拠点を置くIdea Reality社のチームは、6人の設計者からなる

Idea Reality社の顧客の多くは消費者をターゲットとしているため、顧客が最終的に市場に送り出す製品は、大量生産され、店舗で販売されることになります。同社は、主に個人の起業家やスタートアップ企業を対象に、設計段階から完成品の製造までのプロセスをサポートしています。初期のプロトタイプは、6人の設計者からなるIdea Reality社のチームが設計に満足するまで、Ultimaker S5プリンターを使用して、可能な限り繰り返し試作されます。その後のプロトタイプは、より完成品に近づけるために、ほとんどの場合、外注されます。

ほとんどのプロジェクトでは、製品とその複雑さに応じて、3〜5回の試作が必要になるとLamb氏は語ります。このような製品の多くは、最終的には射出成形で製造されることになりますが、この分野では3Dプリンティングが非常に役立ちます。高額の費用がかかる後の段階に入る前に、同じプラスチックや類似のプラスチックを使用しながら、欠陥やその他の不完全な部分を設計プロセスの初期段階で発見できるからです。

「一晩で何かを作り、翌日にはプロトタイプをポストに投函できるのは、革命的なことです」とLamb氏は語ります。「より短期間で、不確実性が低く、信頼性の高いものを作れるようになりました」。

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Idea Reality社が製作したキャップバルブのプロトタイプ

プリンティングから製品へ

Idea Reality社の顧客も成功を収めています。たとえば、顧客の1人である教師は、数学の授業のための分度器を開発し、英国最大の学校用文具メーカーにライセンスを供与しました。さらに同社は、新しい設計により衛生性と効率を高めたトイレ掃除ブラシ「FlushBrush」にも携わっています。この製品は、英国の人気リアリティ番組『Dragon's Den』で出資金を獲得しました。

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FlushBrushのプロトタイプを作成しているUltimaker S5。従来のトイレ掃除ブラシの設計を見直すことで生まれたFlushBrushは、テレビシリーズ『Dragon's Den』で紹介された

Ultimaker S5を使用することで、Idea Reality社はより短期間で多くのプロジェクトに取り組めるようになりました。UltimakerがIdea Reality社に適しているのは、信頼性と使いやすさ、そしてオープンフィラメントシステムを採用しているからだと、Lamb氏は語ります。このシステムのおかげで、TPU、PP、炭素繊維強化材料など、製品に最適な材料を調査して選択することができます。

「私たちは、標準的な硬質プラスチックしか使えない状況は避けたいと思っていました」とLamb氏は説明します。「滑り止めの部分や小さな軽いパイプなども作れるように、他の材料も試してみたかったのです。それがUltimakerを採用した主な理由の1つです。Ultimakerは当社の発展に合わせて、さらに活用できるようになると感じたのです」

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電子機器ケースのプロトタイプ

最近、Idea Reality社では、人間工学に基づいた設計により、肩にかかる負担を軽減するバックパックを開発しました。開発の際には、プリンティングと変更を何度も行いました。また、着用者の動きによる、ほぼ絶え間なく変動する圧力に耐え、適応することのできるプロトタイプを作成する必要がありました。そこでIdea Reality社は、衝撃強度と耐摩耗性に優れたナイロン材料を採用しました。

グローバル展開

同社では、年間平均50社の顧客に対応しています。イギリス国内だけでなく、ドバイ、スペイン、スウェーデン、オーストラリア、インドなど、世界各国から顧客を集めています。Idea Reality社は、3Dプリンティングをさらに取り入れることを目指し、将来に向けて準備を進めています。

「3Dプリンティングを導入した結果、当社の主な障壁は、技術ではなく言語になりました」とLamb氏と語っています。

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化粧品市場で販売される製品のプロトタイプ

Idea Reality社では、この技術の進歩に伴い、最終用途部品をプリントするオプションを検討していくとLamb氏は語ります。これは、顧客全体の約20%を占めている産業系の顧客にとって、間違いなくメリットがあります。しかし、当面の間は、完璧な製品を目指す手段として失敗を活かしながら、設計、反復、改良を続けていく予定です。

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