NavVis VLXは普通の屋内スキャナーではありません。
位置特定と地図作成の同時実行(SLAM)技術を搭載した、世界で最も精度の高いウェアラブルマッピングデバイスです。高速、高精度、コンパクトで、AEC業界の現場やさまざまな場所で、屋内の現況データを効率的にキャプチャして視覚化することができます。
このような画期的なハードウェアを開発しているのは、NavVis社の工業デザイナーであるSarah Godoj氏とNils Christensen氏です。この困難な課題を解決するために、両氏はラピッドプロトタイピングを活用し、設計をテストして完成させました。
その結果として、デバイス精度、アクセシビリティ、人間工学設計の最適なバランスが実現しました。その検証には、Ultimaker 3Dプリンターが使用されました。
「これは私たちのチームが成し遂げたエンジニアリングの偉業です」とChristensen氏は言います。「その気になれば、NavVis VLXを背負ってハイキングだってできますよ」
Nils Christensen氏は、NavVis VLXの快適性を確保するために、ショルダーパッドを何度も3Dプリントした
NavVis VLXを予定どおりに発売するためには、3Dプリンティングによる迅速な開発サイクルが欠かせなかったとSarah Godoj氏は言う
センサーが最も重要
ドイツのミュンヘンに本社を置くNavVis社は、屋内空間の正確なマッピングを可能にする次世代技術の開発を専門としています。ウェアラブルなNavVis VLXシステムには、地上設置型のソリューションに匹敵する精度が必要だったため、デザイナーにとってはスキャナーのセンサーの位置が最優先事項でした。
何度も検討を重ねた結果、2つのマルチレイヤーLiDARセンサーと4台の高解像度カメラを組み合わせた革新的な設計を採用しました。この2つを組み合わせることで、屋内空間を360度測定してマッピングすることができます。また、オペレーターの頭上の最適な位置にこれらを取り付けることで、オペレーターの視野に入らないようにするとともに、周囲全体を見渡せるようにしました。
昼夜を問わず稼働するUltimakerを活用し、デザイナーは正確に3Dプリントされたアングル部品にPVCチューブを接続して設計を素早く検証した
しかし、基本コンセプトを決めた直後、デザイナーたちは、NavVis VLXを他のウェアラブルスキャナーと差別化するために、ユーザーが背中に何も装着せずに済む製品にしたいと考えました。これは、狭い場所で体の向きを変えたときにぶつけないようにするためです。
Godoj氏は次のように説明しています。「木やダンボールなどの他の材料も使いましたが、最終的な設計に近づいた頃は、3Dプリンティングより優れた方法はなかったので、他のものは考えませんでした」
すべてのものに簡単に手が届く
その結果、あらゆる操作を容易に行えるようにするという、独特で困難な課題が生じました。特にタッチスクリーンは何度も検討する必要がありました。視野に入る位置にタッチスクリーンを配置する一方で、ユーザーが床が見えるようにして、地上の基準点を見つけたり、危険を回避したりできるようにする必要もありました。
最適なディスプレイの角度と位置を見つけるためには多くの要素を考慮する必要がありますが、チームはここでも3Dプリンティングを利用して、アイデアを高い精度で検証しました。
3Dプリンターで作られたアングルとPVCパイプを接合することで、可能な限り迅速に構成をテストすることができました。PVCパイプは任意の長さに簡単に切断できるため、3Dプリントする必要があったのは、接続用のアングルだけでした。
「CADによる設計を実証するために、正確なアングルが必要でした」とChristensen氏は語ります。「つまり、ラピッドプロトタイピングと正確さを最適な形で組み合わせる必要がありました」
この手法により、チームは自社のUltimaker 3Dプリンターの寸法精度についても理解を深めることができました。すべての3Dプリンティングの成果物は、材料が冷えるとわずかに収縮しますが、チームは寸法が0.1mmずつ異なるコネクターを複数プリントすることで、その収縮に対処しました。
CADで設計を仕上げる際に、Ultimaker Curaの設定を使用して成果物にディテールを追加した
どんな体にもフィットする設計
「人体にフィットするデバイスを作るには、多くの課題があります」とGodoj氏は説明します。「しかし、3Dプリンターを使うことで、試作を何度も繰り返し、適切なサイズと重さの組み合わせを実現することができました」
チームの目標は、バックパックを前に抱えているような、人間工学的に理にかなった使用感を作り出すことでした。木や3Dプリンティングで作った大まかな形状に、水を入れたボトルを詰めて、デバイスの重さをシミュレートしました。Godoj氏とChristensen氏は、違和感を覚えるテストユーザーがいるかどうかで、調整の必要性を判断しました。
これは特にショルダーパッドに必要な作業でした。最適な設計を見つけるために、チームはUltimaker Curaの設定を調整し、詳細なプリントに進む前に、暫定版のプリントを素早く作成しました。このような方法により、誰もが快適に使用でき、NavVis VLXが滑り落ちることのないパッドを実現しました。
ウェアラブルスキャナーには人間工学的な設計上の課題が非常に多いため、同社では3Dプリンティングによるプロトタイピングを採用した
もう1つの人間工学的な課題は、1人で持ち運んで現場ですぐにセットアップできるように、デバイスを輸送ケースに安全に収納できるようにすることでした。そのためには、折りたたみ機構が必要です。しかし、NavVis VLXはどこで折りたためば体積が最小になるのでしょうか。
工業デザイナーたちは、ここでもCADモデルを検証するために3Dプリンティングを使用しました。3Dプリントしたアームに穴を開け、長いネジを挿入して一時的に固定しました。
パンデミック下でのラピッドプロトタイピング
このような反復作業を迅速に行うために、チームはUltimaker 2+とUltimaker S5の優れた出力性能を利用しました。
Godoj氏とChristensen氏は、プリンターの信頼性を活かして、新しいアイデアを可能な限り早くテストするために、24時間の反復サイクルを開発しました。
金曜日に「プリント」を押し、家に帰って週末を過ごし、月曜日に戻ったときに完成しているようにしたのです。
もちろん、COVID-19下では、デザイナーのほとんどが自宅で仕事をすることになったため、ワークフローを変えなければなりませんでした。そこで、Ultimaker S5とUltimaker Digital Factoryのリモート3Dプリンティング機能を利用しました。
Ultimaker S5でリモートからプリントと監視を行うことで、COVID-19による制限にもかかわらず、ラピッドプロトタイピングを中断することなく続けることができた
プリントジョブを安全に監視し、オフィスにいる誰かに、成果物を取り外して「確認」を押してもらえますか、と頼むことができました。また、プリントの途中で新しいフィラメントを追加する必要性が生じるのを避けるために、2台目のウェブカムを設置してスプールを監視しています。これにより、パンデミックの制約の影響を受けずに試作を繰り返すことができました。
Christensen氏は次のように述べています。「3Dプリンターは少し複雑だと思っていましたが、Ultimakerは使いやすく優れたソリューションでした。次のステップや今何が行われているかを常に説明してくれます」
同社のチームは15人のデザイナーと機械エンジニアで構成されていますが、この使いやすさのおかげで、全員が部品をスライスして3Dプリントすることができており、Ultimakerの操作に不安を感じている人はいないといいます。
継続的改善
NavVis社はスキャナーを受注生産しているため、設計チームは3Dプリンティングを使用して製品の試作と改良を続けています。Christensen氏は次のように述べています。
私たちが機械で行っているすべての開発ステップのうち、80%のステップでは、まず3Dプリンティングを行います。リードタイムが最大5週間もかかる金属ブロックからの部品製作ではなく、3Dプリンティングを行うのです。かなりのコスト削減になることはご想像いただけると思います。
Christensen氏とGodoj氏は、3Dプリンティングのプロセスをさらに改良し続けています。また、Ultimakerのオープンフィラメントシステムを利用し、リサイクル可能な材料で多くの部品をプリントすることで、NavVis社の持続可能性目標に貢献しています。
このようにして、彼らは屋内スキャナーの開発とより良い世界を作ることに貢献しています。
さらに詳しく知りたい場合
以下のホワイトペーパーをダウンロードして、3Dプリンティングを使ったラピッドプロトタイピングにより実現できる設計サイクルの短縮効果をご覧ください。または、製品開発アプリケーションのページをご覧ください。