Azoth社では、製造業の顧客が数千ドルものコスト節約を実現しながら、ちょうど必要なときに機械部品を利用できるように支援する新しいビジネスを立ち上げています。
エンジニアが熱く語る積層造形の話は、魅力的です。実際、Azoth社のゼネラルマネージャーであるCody Cochran氏とポリマーエンジニアリング責任者であるRonnie Sherrer氏を前にすれば、ファンにならざるをえません。彼らは専門性を磨き、精力的に取り組むことにより、積層造形と最終用途部品の3Dデータを合理的に適用することを通じて、顧客である製造企業に新しい価値を一貫して提案し続け、成果を上げています。
積層造形と材料は進化を遂げており、最近では、多くの最終用途部品を工具不要で従来の方法よりも低コストで製造できるようになっています。Cochran氏によれば、重要なことは、顧客の在庫の中で、仕様を満たし、明確なビジネスケースを持つ部品を特定することです。それらの部品をデジタル在庫に変えることにより、オンデマンドでの迅速な部品生産を実現します。
「すべての部品が積層造形に適しているわけではありません」とCochran氏は言います。「私たちは分類を行って、サプライチェーンのどこに複雑性の問題があり、どこに過剰在庫があり、部品の故障頻度が高いのはどこかを突き止めて、それぞれについてビジネスケースを構築します。」
Azoth社は、積層造形のメリットを顧客基盤に向けて提供するためにEWIE Group of Companies(EGC)により設立されました。EGCは、John Deere、GM、Fordなどの顧客企業を始めとする、12か国にまたがるFortune 500企業の顧客基盤の間接生産のニーズを満たすことに力を注いでいます。Azoth社も、機械部品に積層造形を適用することにより、このような間接的なニーズに応えています。
Azoth社は顧客の部品コストの大幅な削減を実現し、在庫を減少させており、顧客の部品コストの大幅な削減により、部品供給が合理化されています
Azoth社のアプローチ
顧客とのやり取りが始まると、Azoth社のチームは系統的アプローチを取ります。顧客の在庫を調べ、まず、最低発注数量の影響で在庫過剰になっている機械部品や、5~10週間以上と生産のリードタイムが長いため在庫切れが発生することが多い機械部品を特定します。続いて、欠陥率の高い部品や効率性向上のため再設計が必要な部品を特定します。このような部品はいずれも顧客の資金や時間の浪費につながり、サプライチェーンを不必要に複雑化させる原因となります。
Azoth社のチームは3Dスキャナーとソフトウェアを用意して、CADデータのない部品のリバースエンジニアリングを行えるようにしています。そして、平均故障間隔(MTBF)が改善されるよう、必要に応じて再設計を行います。材料分析を行うとともに、実際の公差を把握します。部品の検証が行われると、後処理、材料、組み立て時間、部品サイズを含めたコスト分析が行われます。
適切な3Dプリンターと材料の選択もこの課題に含まれます。Azoth社では、金属とプラスチック両方の積層造形を使用し、特にこのプロセスではUltimakerの3Dプリンターを頼りにしています。Ultimakerのシステムでは熱溶解積層法(FFF)の技術が使用されており、デスクに置くことができるコンパクトなサイズでありながら、幅広い造形サイズに対応しています。S3の造形サイズは最大230 x 190 x 200 mm、S5は最大330 x 240 x 300 mmまで対応しており、どちらも材料押出のデュアルノズルを備え、レイヤー解像度は最小20ミクロンです。
「このプロセスでは、Ultimakerの材料とプリンターがカギになります」とCochran氏は言います。「運用コストの低さと材料の品質の高さによって、お客様の大幅なコスト削減が可能になり、このような成果を実現できました。」
チームは金属部品にも目を向け、プラスチック製にすることで、公差と性能を維持しながら製造をさらに効率化することができないかを検討します。
「Ultimakerの材料は低コストでありながら、従来のプラスチックと比較して性能に優れ、場合によっては一部の金属よりも優れています」とCochran氏は言います。「元は金属を加工して作られていたグリッパーフィンガー部品では、プラスチック製の積層造形に作り替えることで1個あたりのコストを350ドルから75ドルまで引き下げられるものがありました。しかも性能は維持したままです。」
アルミニウム製グリッパーフィンガーを3Dプリントのポリマー製グリッパーフィンガーに変更し、強度を高めたダウエルピンを使用
Azoth社のチームが分析している部品の種類としては、治具、固定具、グリッパーフィンガー、エアブローノズル、ゲージハンドルなどがあります。彼らは積層造形によるメリットが得られる部品を見つけ出します。特別な機械設備や設定作業が不要で、最低発注数量がないため、驚くほどの時間とコストの節約が可能になります。
「このような部品は、普通の人から見て魅力的なものではないでしょう」とCochran氏は言います。「けれど製造を継続するための動力となる部品です。私たちは、お客様の製造現場における機械のダウンタイムをなくし、複雑性を軽減し、コストを削減し、物理在庫を縮小するために取り組んでおり、成果を上げています。」
Azoth社では、部品の適切な場所に正確に当たるノズルを設計することでパフォーマンスを向上させました。これは従来では製造が不可能な設計でした
Take One, Make One
顧客のデジタル在庫の運用が開始されると、Azoth社は、「Take One, Make One(TOMO)」と呼ばれるモデルを使用します。これは、交換部品が必要になったときに新しい部品を製造するという、オンデマンド製造の直接的な形態です。Azoth社では、部品管理システムと、Azoth社のコンピテンシーセンターに注文を送信するERP/MRPシステムを同期させてこの運用を行っています。新しい部品は通常、24時間以内に製造され、出荷されます。
「この部品管理システムでは即時、製造指示書を生成できます」とSheerer氏は言います。「そのため、お客様は最小発注要件など、任意の要件に基づいて在庫を管理するのではなく、実際の使用状況に応じて、限定された在庫を管理すればよくなります。これによりコストが節約され、お客様の効率性を向上させることができます。」
イリノイ州シカゴを拠点とし、3Dプリンティングソリューション、材料、コンサルティングの専門知識を提供するDynamism社は、Azoth社のTOMOイニシアティブの重要な協力企業です。Azoth社のチームはDynamism社からUltimakerプラットフォームを紹介され、両社のチームは3Dプリンティングの限界を押し上げるため、戦略的関係を維持しています。
「Dynamism社のチームの継続的なサポート、専門知識、創造力のおかげで、お客様のニーズに応えることができます」とCochran氏は言います。「彼らのサポートにより、いつでも最適なソリューション、材料、結果を提供することができます。」
この自動車用治具は3Dプリントされたもので、自動的に構成部品の位置決めを行うためのマグネットインサートが付いています
鋼鉄製インジェクタピンの在庫がなくなった場合、ポリマー製の交換部品を2日で3Dプリントできます
結果
Azoth社で製造された各部品は、実績のあるビジネスケースとともに顧客に提供されます。部品によっては、ビジネスケースが大きく異なる場合があります。
「当社のアプローチはお客様にとって前向きな形で現状を打破するものです」とSheerer氏は言います。「Ultimakerを使用して、シンプルな摩耗パッド部品を積層造形に移行したことで、お客様は3万ドルのコスト節約を実現しました。これが1つのビジネスケースです。」
部品のラピッドプロトタイピングも、Azothチームが対応している業務に含まれます。プロトタイプのカッター部品の場合、鋼鉄をCNC加工して作成するのに通常12~14週間かかるものがあります。Azoth社のチームのプラスチック製プロトタイプは、そのままで正確に装着して使用でき、1日足らずでチェックできます。Azoth社の結果は明らかです。50~90%のコスト削減を安定して達成しています。
このプロトタイプのカッター部品のリードタイムは、CNC加工では12~14週であるのに対し、3Dプリンティングなら1日です
「あるグリッパーフィンガー部品では、1か月に約30点を、従来製造していた部品の約半分のコストで製造しています」とCochran氏は言います。「新しい部品をSLSナイロンやSLA樹脂でテストしましたが、最終的にUltimakerでPA 4035を使用することになりました。これはデルリンの代替品であり、この分野では強固で耐久性のある材料です。」
Azoth社のチームは、機械のダウンタイムを短縮するための緊急時用部品の製造にも対応しています。一例として、在庫不足となったツールの鋼鉄製インジェクタピンが挙げられます。3Dの金属製の交換部品であれば1週間かかるところ、ポリマー製の交換用ピンを48時間で用意できました。
Azoth社では、Ultimaker 3Dプリンターを使用することで、このようなアームエンドツーリング用グリッパーフィンガーを毎月30個製造できます
Azoth社のチームは、ツールと専門性を活かして、性能を向上させるための部品の再設計も行うことができます。目標に向けて正確に空気流を噴出するよう設計された複雑なエアブローノズルがよい例であり、積層造形であれば簡単に製造できます。
Azoth社のチームは、積層造形が製造のサプライチェーンにおいて重要かつ価値あるものであることを社内にも顧客にも実証しました。Cochran氏とSherrer氏は、熱意を持って先頭に立ち、イノベーションを推進し、顧客が高い成果を上げられるよう支援する取り組みを続けています。
「日々、積層造形を使って、お客様の部品在庫に関する有効なビジネスケースを提案することで、お客様の中にあるマインドセットを変えています」とCochran氏は言います。「Ultimakerの3Dプリンターと材料を使用すれば、コストを最適化でき、これまでは想像もできなかったようなスケーラビリティに優れた製造と信頼性を実現できます。」